『懲畏秘録』

　その１２

史　料	釈　文	註
24	此儀大坂御奉行新らたに仰蒙られ給ふ時、与力の内一人迎ひ 　　与力と唱へ、江戸表へ出、御奉行対面之上、万事御聞合御相談 　　有之、御供ニて上坂いたし、市中御巡見の節は、先例を以、迎ひ与 　　力之宅へ御入有之、暫時御休息の事也、尤此与力大ニ規模之 　　事なり、しかるに大塩の徒、右御休息之間に事を発せん、若 　　自然のがれ出給ハゞ、四方よりはさみ討んとの手段、兼ての仕組の 　　　よし、 東西奉行の迎ひ与力朝岡氏 新御上坂の西御奉行堀伊賀守様 　右之旨趣有之故、大塩之 　　徒、万事手つかひのため、前宵より御番所之直宿順番にかゝわらす、 　　同役へさしくりと云置て、瀬田済之助、大塩格之助、小泉淵次郎 　　平山武左衛門之四人止宿いたし、明日の手つがひをのミ心をこら 　　し、夜の明るを待居たり、然るに右党人の内、東組御同心ニて候 　　平山武左衛門一人、天命を恐れしにや、其夜、俄に心替り、反忠い	幸田成友 『大塩平八郎』 その１２０ 規模 名誉 てつかひ (手遣い・手使い) 軍勢を配備する こと 宿直は 小泉・瀬田 のふたり
25	たし、御奉行へ蜜に内通す、御奉行驚かせ給ひ、まづ明日の巡 　　見延引になさんやと、御公用人始め御近習色々取々にの御相談 　　なりし処に、表には瀬田、大塩、小泉の輩、明旦の都合に心をこら 　　し、蜜談面々心を配り居けるが、平山ひそかに御前へいてしと 　　聞、さてハと三人御居間をうかゞひ、模様ニより不慮の殺害にも 　　およばんと踏こみしが、御居間にも早御手宛ありて、御近習 　　武善之助、一条始と云ル両人駈向ひ、先にすゝむ小泉を 　　さし通し、討て捨たり、此音に御家来追々かけ来ル体に候故、 　　瀬田、大塩ハ事の叶はさるを見て、両人ともに高塀を躍り越、 　　はせ帰り、平八郎にかくと告けれは、平八郎、少もさわかず、此 　　上は片時も猶予なりがたく、早く大事を興さんと、東雲の 　　たなびくころぼひ、其手宛をそいそきけり、兼て約束の事	武善之助は 御用人

『懲畏秘録』凡例・目次/その１１/その１３

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