『懲畏秘録』

　その２０

史　料	釈　文	註
40	一斗位の米を買に下り候者ともを召捕抔いたし、実に昔葛 　　伯といふ大名、其農民の弁当を持運ひ候小児を殺候も同 　　様、言語同断、何れの土地にても、人民ハ 徳川家御支配の 　　ものに相なき処、如此隔を付候は、全奉行等之不仁にて、 　　其上勝手我儘之触書等を度々差出し、大坂市中游 　　民斗を太切に心得候は、前にも申通り、道徳仁義を不存拙 　　き身故にて、甚以厚ケ間敷不届之至、且三都之内大坂之金 　　持ども、年来諸大名へかし付候利徳の金銀并扶持米 　　等を莫大に掠取、未曾有之有福に暮し、丁人の身を以、 　　大名之家老用人格等に被取用、又自己の田畑新田等	大塩檄文 向江 強 「檄文について」
41	を夥しく所持、何に不足なく暮し、此節之天災天罸を見 　　ながら、畏も不致、餓死貧人乞食をも敢而不救、其身は膏 　　梁之味とて結構之物を食ひ、妾宅等へ入込、或ハ揚屋茶 　　屋抔へ大名之家来を誘引参り、高価の酒を湯水を呑 　　も同様にいたし、此難渋の時節ニ服をまとひ候かわら物 　　を妓女と共に迎ひ、平生同様に遊楽に耽候は、何等之 　　事哉、紂王長夜の酒盛も同事、其所の奉行諸役人、手に 　　握居候政を以、右之者どもを取〆、下民救候義も難出来、日 　　々堂嶋相場斗をいじり事ニいたし、実に禄盗ニて、決し 　　て天道聖人の心に難叶御赦しなき事ニ候、蟄居之我等	絹

『懲畏秘録』凡例・目次/その１９/その２１

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