塩逆述9-3

Я［大塩の乱資料館］Я
2008.4.18

『塩逆述』巻之九　その３

国立国会図書館蔵

◇禁転載◇

宇津木敬司書

管理人註

　　　大塩平八郎方ニ逗留致居候、彦根藩中、宇津木敬次　　　小者友蔵、主用ニ而、二月十八日、平八郎方出立致候処、大　　　坂騒動ニ付、途中尚又上坂之積にて、引帰し候を、怪　　　敷存、大津御代官石原清左衛門江召捕、大坂町奉行　　　所へ引渡、於同所吟味之節、敬次国許之書状差出ス、宇津木敬次書一筆認残申候、追々暖和之時節相成候、御両親様、尊兄様、姉上様始、下略　十七日夕刻、大坂安治川江着船仕、四ケ年以前出立之砌、師弟之契約を仕候、大坂天満与力大塩平八郎方へ着仕、久々ニ而面合仕候処、如何成天魔見入候哉、平八郎存外之企有之、大坂町奉行討取、市中致放火、君ヲ誅し民ヲ吊抔と、全ク謀叛之企ニ而、私荷担可致旨、強て申聞候間、種々諌言致候得共、申出セし事返さぬ気性故、容易ニ者承知仕間敷と奉存候、併此儘見捨、私帰候而者、武士道不相立、其上如此大望を打明し候平八郎ニ候得者、私不承知之上ハ、生而返し申間敷候、乍去荷担仕候得ハ、第一御家之名を穢し、忠孝之道を背き、師を見捨候而者、一義相立不申、無拠一命を差出シ、今夜平八郎始徒党之者江、得と利害申聞、忠孝仁義相立候様仕度奉存候間、何共重々奉恐入候得共、　御前万端冝敷御執成奉願上候、是重々厚キ御慈愛を蒙り、私帰国も無程と御待も被下候義と存候得者、尚更故郷難忘、未練之者と覚召耻入候仕合御座候、かゝる時節ニ参り合候者、全く私武運尽候義と存候、且友蔵義、永々之旅中、厚ク世話致呉候、其上私、不快之節なと、別而厚く介抱仕候、一礼も不申相別申候、冝御伝可被下候様子、具ニ申上度候得共、即日様子御地へも相知レ可申候間、不申上候、大坂騒動と御承知被下候ハゝ、敬治相果候義と思召可被下候、最早時刻ニ相成、心急キ荒増申上候、余ハ御察奉願上候、已上、　　　　　二月十八日　　　　　　　宇津木敬治　　　　　　　御一統様右敬治小者友蔵、二月廿二日、大坂町奉行所に於て吟味之節、兼而召捕ニ相成候庄司義左衛門呼出シ、敬治之様子相尋候処、同十八日夜、平八郎父子其外一味之者列席候へ、敬　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　タチ治罷出、種々致見候得共、聞入無之、敬治便用ニ相立候跡にて、平八郎申聞候者、敬次義、もはや生てハ帰しかたし、誰そ打留可申と申聞候処、大井正一郎承り、刀押取立出候を、平八郎声掛、大刀打ハ覚束なし、鎗ニて突留よ、と申けれハ、心得鎗引提、敬治手を洗ひ居候処へ立寄、正一郎大音ニ、宇津木氏、一命を先生ニ為ハれ、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　サと鑓を撚り、突懸候処、敬治、聞よりとつかと坐し、両肌押くつろけ、腹つき出し、御存分ニと云間もなく胸板突通し、直ニとゝめの鑓、其儘相果候由、儀左衛門申立候由、

啓治当年廿九才、彦根家老宇津木下総
千五百石を領ス
忰ニ而
武者修行ニ出、平八郎方立戻り候所、右之次第にて相果候よし、可憫可憫

「宇津木静区の家郷に永訣を告げた書面」

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