『懲畏秘録』

　その６

史　料	釈　文	註
12	夥し、然れども平八郎ハ何れの手にあるや、居所定かならす 　　して、前かと思へば後にあり、唯今在しに忽ち見えずなり、 　　町人どもハ鉄炮の音に驚き、雑具、金財、帳面、書物等も 　　とりのくる事ならす、父母をかゑり見る間もなく、妻子をすて、 　　赤子をさかしまにおひたるもあり、中にも折角連れ退し 　　子供、大勢あるは迯るさまたげとならんと、無拠連し子供を 　　艱難辛苦して迯れし処、悪党にいて会、疵を蒙り、命 　　を落すもあり、誠に修羅のちまた、焦熱地獄の苦しみも 　　かくやあらんと泣叫び、周章さわきしありさまハ、目もあて 　　られぬ次第なり、又所々には、首、手足、切はなたれたる死骸も 　　あり、又ハ鑓きず、鉄炮疵を蒙りながら焼こがれたるかばね
13	往々数多これありしとそ 　　　伝へ云、大塩手をあげてさしまねき、又ハ詞をかけて大に 　　　よはわりしハ、市中の人々怪我なきやうさらしめんとの 　　　事なりしよし、尤公義又ハ御固めのため御出ありし方、 　　　町人等を疵つけ、損しさせしなど決してなき事ニ而、多く 　　　ハ悪党のしわさならん歟 一　焼失所、天満東与力町ヨリ川崎　東照大権現宮御宮、西与力 　　町、同心町、其近辺天満天神社、仏正寺御堂、其外寺院、天満 　　大抵一円、市之側、堀河まで焼、天神ばし焼落、難波橋は南 　　詰まで、北浜、東堀、舩場の西ハ中橋すじ、所ニより千檀木通り 　　まで、南ハ安土町、備後町、本町通ニて舩場、東堀まで一円、上町 　　は西御所之北、葭や橋より東、八軒家、谷町、東御番所のうし	「大塩焼け 被害一覧」

『懲畏秘録』凡例・目次/その５/その７

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